オレンジ・ゲーム 3


昨日は一日中泣いた。
答えを聞かないで逃げたのを後悔して。
葉柴の声で断られて終わりにすればよかったって。
あーあ。
一日ぶりに学校行きますか。
おどおどするアホの顔が浮かんできますわ。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


学校に着くなりとりあえずガン見してみた。


「きっ昨日ぶり」
「おはよ〜ん」


めっちゃ普通。
いつも通りなんすけど葉那ちゃん。
それともアレはオレの頭がおかしくなっちゃてたのかも。


「昨日のノート見して葵ちゃん」
「あ、うん」


“ちゃん”付けで呼ばれたのにつっこむのも忘れた。
何かオレばっか動揺してね?
葉那はオレの真ん前の席だ。
のに、全くこっち向かねぇ。
葉那ちゃん、背中しか見えませんけど。
やっぱアレはオレの頭がおかしくなってたわけじゃないみたいだ。




どうしようどうしようって思ってたら、いつの間にか帰宅のお時間。


「葉ー那ーちゃん☆帰ーろ☆」
「・・・うん」


判断ミス。
このテンションは間違った。
いつも通りにしようと思っただけ。
ごめん葉那。
そして切り出す。


「葉那あんね、ずっと考えてたんだけど・・」




来た。
やだ。
聞きたくない。
終わっちゃう。



「ちょっ、又かよ!」


今週二回目廊下ダッシュです。


「待てって!」


あれ?追って来る。
こないだは一人ダッシュだったのに、何?


「葉那意外に早いんだけど!」


女の子に追いつけないなんてダサ!
めっちゃ悔しいんですけど。


「葉那止まれって!」
「やーだー!!」


とか何とか言ってるうちに、葉柴に腕掴まれて勢い余って二人で転倒。
顔面強打。


「痛いぃ・・」
「痛って・・」
「鼻とデコ痛いよバカぁ・・」
「・・・すいません」


起き上がってまず一言。
恨めしい上目遣いが可愛い。
なんて。今まで思いもしなかった。
でも可愛い。
二人で向かい合って廊下に座り込む。


「・・どこ?見して」


葉柴の顔が今まで見た事無いのに変わって、同時にあたしの前髪に手が伸びた。


「っ・・・・」


次の瞬間。
唇と唇が軽く触れた。
夢にまで見た瞬間。
だったけど、何で?
あんたの好きな人は違う子でしょ?
何で?期待しちゃうじゃない。


「っ!?」


何で?って顔が可愛くてもっかいちゅーしてやった。
ビックリしてるビックリしてる。


とか調子こいてたらグーで殴られた。


「ったぁ・・何すんだよ!」
「こっちのセリフだバカ!!」
「だって可愛かったんだもん」
「かっ・・・」
「オレ葉那の事めっちゃ好きだったみたい」
「すっ・・・?」
「うん。だからオレ達はこのまんまでいんだ」


本日三回目のちゅーです。
全部が突然すぎて頭がついてかないけど、あたし達はこのまんまでいいみたい。






「・・あ!」


結婚したら“葉柴 葉那”で変
と言われたから、「婿養子にでもするよ」って言ったやった。
そしたら葉柴は「そっか」って笑った。
でもあたしはそれでもいいと思った。

                                     THE END