オレンジ・ゲーム 2
とかつっこんでみたものの、ダメージ大。
ヤバイ。
鼻の奥がツーンとしてきた。
「なぁ葉那ぁ?」
言い返した葉柴は少し後ろのあたしに同意を求めた。
「・・・っ」
答えられない。声が出ない。
あたしは唇を噛んで足元を見つめるだけ。
「葉那・・?」
困惑した葉柴を襲ったのは梓月くんのかばん。
「えいっお仕置き〜」
葉柴よりちょっとだけ背の低い梓月くん。
頑張ってアホ葉柴の首の付け根をピンポイントで狙い撃ち。
振り返って爽やかスマイル。
この笑顔できっとファン数人は卒倒。
「葉那ちゃん、またね」
多分鼻の頭真っ赤だったけど、負けじと極上スマイル。
梓月くん、あたしがこのアホを好きって知ってるみたい。
ありがとう梓月くん。
おかげで勇気が出ちゃいました。
「・・お仕置きって何?」
全く把握出来てない様ですけど。
そんなの知りません。
「梓月くんは優しいなぁ。どっかのアホはやめて梓月くん好きになろうな」
「はぁ?何言って・・・・・え!?葉那好きな奴いんの!?」
出た。
古典的過ぎて笑えちゃうわ。
今目の前でアホ面してるあなたの事です。
「梓月くんのお仕置きって何か知ってるよ」
「あんたがあたしを泣かせた罰」
「たまにはあたしの方も見てよ」
今まで言いたかった事全部言ってやりました。
「葉那!!??」
全然状況が飲み込めてないアホの声なんてクソ食らえ。
何も聞かずに長い廊下を全速力。
中学校ぶりにダッシュした。
落ち着け心臓。
「走ったせい」
自分に言い聞かせる。
もちろんあいつは追ってきません。
いいんだ。
意味不明すぎるから。
いいんだ。
答えなんて期待してないから。
明日は休んでしまえ。
いっそ世界ごとなくなってしまえ。
なんて。
未来を夢見るラブラブカップルにはいい迷惑。
「梓月ー、マジオレどーしよ・・」
「・・何が」
やだ何この子。ちょー冷めてる。
そんなのお構いなしだ!行けオレ!
「き、昨日葉那に・・その・・」
「あぁ、ケンカしたの?葉那ちゃん休みだね」
きちんと席についてオレを見下ろすこいつ。
その机にちょこんと両手と顔を付いてしゃがむオレ。
何か上下関係?
顔はもちろん麻倉さんと瓜二つだからちょー可愛いんだけど、怒るとちょー怖い。
だから逆らえない。
逆らった事なんてないけど。
「違くて・・葉那に告られた・・?のかも・・」
「・・ふーん」
「何その落ち着き様!オレはビックリなんだけど!」
「でも葉柴は祷李が好きなんでしょ?」
「うん。ちょー好き」
「葉那ちゃんは?」
「好きだけど・・葉那は友達じゃん?」
「じゃあそれでいいんじゃない?断れば」
・・・シビア・・でも正しい。
「断ったら元に戻んないよねきっと・・」
分かってるけどそんな事。
葉那は気ぃ遣ってアホみたいな話はしなくなる。
葉那はこういう奴だ。
「葉那ちゃん気遣うだろうね」
・・・葉那はそういう奴だ。
「ほんとに気付いてなかったんだね」
「・・気付くわけないじゃん」
気付くわけないじゃん。
だって毎日麻倉さんの話聞いてくれてたんだぞ?
「よかったね」っていっつもニコニコしてくれてさ。
「気付いてないの葉柴くらいだったと思うよ」
―――――――――は?
何それ。
皆気付いてたの?
皆鋭すぎない?
てかオレが鈍かった?
よく分かんない。
頭がボーっとしてきた